世界に広がるハウルの軌跡
 そもそも『ハウルの動く城』の初公開も海外での出来事。2004年9月に開催された第61回ヴェネチア映画祭で全世界初披露されたのだった。同映画祭では、宮崎監督とスタジオジブリ作品の質の高さと継続的な達成度の高さが評価され、オゼッラ賞を受賞。上演終了後には、5分にも及ぶスタンディングオベーションがあったという。
台湾版ポスター
▲『台湾版ポスター』
 韓国公開は日本公開から約1カ月後の12月23日。観客動員数300万人を超える大ヒットを記録し、韓国で公開された日本映画としては歴代第一位を記録した。
 2005年に入ると2月4日より「霍爾の動城堡」のタイトルで台湾で公開開始。3月25日までの興行成績は9,847万台湾ドルで、日本製アニメとしては新記録となった。シンガポールでは2月24日より、香港では3月24日より公開が始まった。香港のタイトルは「哈爾移動城堡」。
 ヨーロッパに目を転じると、他の国に先駆け1月からフランスで公開がスタート。公開最初の1週目で配給収入第1位となった。そのほかの国では夏から秋にかけて公開がぞくぞくとスタート。8月にドイツとロシア、9月に入るとイタリアとイギリス、10月にスウェーデンとノルウェー、11月にはオランダというスケジュールになっている。

イスラエル版ポスター
▲『イスラエル版ポスター』
 また非ヨーロッパ圏でも、7月にイスラエル、8月にメキシコとブラジル、9月にオーストラリアと、『ハウルの動く城』の上映国は増える一方だ。

アメリカ版ポスター
▲『アメリカ版ポスター』
 2005年6月からはアメリカ公開が始まった。最大202館で上映され、現在も公開中。前作『千と千尋の神隠し』は、宮崎監督とも親好が深いピクサーのジョン・ラセター監督がプロデュースを担当した。しかし、今回は新作制作中ということで『ハウルの動く城』英語版制作にあたっては、『モンスターズ・インク』を監督したピクサーのピート・ドクター監督が、ディズニーのリック・デンプシーと共同監督を務めた。  英語版キャストにはハリウッドの実力派俳優が名前を並べている。主なキャストは、ハウルにクリスチャン・ベール(『バットマン・ビギンズ』)、老女のソフィーにジーン・シモンズ(『スパルタカス』)、荒地の魔女にローレン・バコール(『オリエント急行殺人事件』)、カルシファーにビリー・クリスタル(『恋人たちの予感』)。

 このほか既に報道されている通り、2005年8月31日から開催された第62回ヴェネチア国際映画祭で、宮崎監督に栄誉金獅子賞が贈られた。栄誉金獅子賞は多くの優れた作品を生み出し続けていることを称えるもので、過去にはフェデリコ・フェリーニスタンリー・キューブリッククリント・イーストウッドらに贈られている。アニメーション映画監督に同賞が贈られるのは宮崎監督が初という。9月9日にはミヤザキ・デーとして、過去の宮崎作品の上映も行われた。

 ちなみに興味深いのが、各国ごとのポスターのデザインの違い。同じ『ハウルの動く城』を宣伝するという目的でも、実にさまざまなデザインだ。そもそも海外では、国内上映ほど宣伝期間を長くとれないという事情がまずある。そのためポスターの役割も一層大きくなっている。その上で、

 ○その国における宮崎駿監督の知名度はどれぐらいか
 ○子供向け/家族向けにアピールするか、アート系にアピールするか

などを考慮して、デザインを具体的に決められていくのだという。

 このように『ハウルの動く城』はまだ世界のどこかで上映されている。ハウルにソフィー、カルシファーやマルクルといった登場人物たちの活躍が、今もまだ観客を湧かせているのだ。


文 藤津亮太
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