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| ゲド戦記 |
| ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント |
| 価格:3,948円(税込) |
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『ゲド戦記』とは、どのような物語なのか、そしてそこから私たちが読み解くべきことは何なのかについて、私の考えをお話したいと思います。 それにはまず、この本がどういう経緯でつくられたのかを知っておく必要があるでしょう。 シリーズの第一巻がアメリカで出版されたのは、一九六八年のことです。これは二十世紀の中でも、きわめて印象深い年です。フランスではこの年に五月革命が起こり、ヨーロッパ文化が大きく変わりはじめました。その胎動は、少し前のビートルズの出現あたりからはじまっていたと思いますが、六八年から六九年にかけてフランスやアメリカで出版された書物は、とても重要な意味を持っています。その中の一冊が、アーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』(岩波書店)です。ひとことで言えば、白人の伝統文化に対する一種の挑戦状のような作品です。では、なぜル=グウィンは、このような本を書いたのでしょうか。 時代背景とともに、彼女の場合は、育った家庭環境からの影響も、とても大きかったと思います。ル=グウィンの父親は、文化人類学者のアルフレッド・ルイス・クローバーです。そして母親のシオドーラは作家でした。クローバーの先生であったフランツ・ボアズは、アメリカ先住民の研究をおこない、この分野で偉大な足跡を残した人類学者です。ボアズはドイツから移民してきたユダヤ人で、アメリカ社会には溶け込めないところがありましたが、クローバーはアメリカ社会の中で育ったアメリカ人です。ボアズには、自分がヨーロッパから追われたユダヤ人という意識がありましたから、心情としてアメリカ先住民にすんなり同一化していきました。しかし、クローバーの場合には、「イシ」という先住民と出会い、彼を研究していく過程において、高貴な魂と精神性を持ったイシたちの世界を、自分たち白人社会が滅ぼしてしまったことに、大きな痛みを感じずにはいられなかったのです。そういうことを感じていた人はまだ少数でしたが、クローバーはとても真面目な人だったのですね。
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1950年、山梨県生まれ。人類学者。多摩美術大学美術学部芸術学科教授、同大学芸術 人類学研究所所長。著書に『森のバロック』(講談社学術文庫、読売文学賞受賞)な ど多数。近著は『三位一体モデル TRINITY』(東京糸井重里事務所)、『ミクロコスモス』『ミクロコスモス』(以上、四季社)。 |
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