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『星をかった日』井上直久/作
『星をかった日』
井上直久/作
架空社
価格:1,733円

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ジブリインタビュー 「星をかった日」の原作者 井上直久さんインタビュー
井上直久さん
井上直久(いのうえなおひさ)さん
1948年、大阪府生まれ。
広告代理店のデザイナーを経て、高校の美術教諭に。83年、『イバラードの旅』で講談社絵本新人賞受賞。92年、高校を退職し、作家活動に専念。95年、映画「耳をすませば」の制作に参加。「バロンのくれた物語」の美術を作成する。現在、成安造形大学教授。“イバラード”というオリジナルの世界を舞台にした作品を20年以上描き続けている。
▼イバラード・東京展
2006年3月23日(木)〜29日(水)池袋東武・6階美術画廊にて開催予定。

「耳をすませば」の放映が決定!
井上直久さんの描くイバラードの世界が背景美術として使われています。ぜひ、この機会をお見逃しなく。

三鷹の森ジブリ美術館では、2006年1月3日から「やどさがし」「水グモもんもん」「星をかった日」の3本の短篇アニメーション映画を上映している。いずれも宮崎駿監督の新作。そのうちの1本、「星をかった日」の原作者が井上直久さんだ。物語の舞台になっている“イバラード”とはどんな世界か、宮崎監督が映画化することになった経緯、などなど、井上さんにお話をうかがった。
星の店を見つけた――これから井上さんの絵本『星をかった日』が出るそうですね。この本が生まれたきっかけからうかがえますか?

井上 はじめはある児童図書の出版社から幼児用の絵本を出す予定だったんです。ちいさい女の子が星を買って育てるお話を考えて、スケッチを作りました。何度か編集者と打ち合わせをした後、結局は自分の好きなように描きたくなって、投げ出してしまいました。それが1999年から2000年くらいのこと。長い間そのままになっていて、実はやっと最近描きあがったんですよ。映画ができた後から僕の絵本ができるという。ほんと、追い詰められてやむなくという感じなんですけど(笑)。3月の個展が開催される頃には出版されていると思います。

――星を育てるという発想はどこから?

井上 「ドラえもん」や「うる星やつら」にも、星をつくる話がありますよね。僕自身、漫画『イバラード物語』のタバコの煙が星雲になる話とか、いろいろ書いています。ありがちなイメージなんです。ではなぜ幼稚園児向けに星を育てる話を書こうと考えたかというと、小さな生き物を育てるというのは、一番わくわくする経験のような気がするからなんですね。子供の頃、ヤドカリを飼ってたら逃げられたとか、ひよこ買ってきて育てたら、最初きれいな色だったのに大きくなってみんな白くなってしまったという思い出があるでしょう? そのわくわく感を表現したかった。それから、星を育ててその上に住むというのは、今まで自分が住んでた地球を相対化することになるんです。つまり、視点を変えて見ればここは唯一無二の世界じゃなくて、いっぱいある世界の一つなんだとわかる。自分がいるところが世界の中心じゃないと気がついたとき、子供の世界が一歩広がるんですよね。

――「星をかった日」の舞台でもあり、井上さんがずっと作品のテーマにしてこられた“イバラード”も、自分の住んでいる世界を異なる視点で見た世界ですね。

井上 そうです。だからまったく架空の世界としては描いていません。おとぎ話には、ありえない世界の内側に入って活躍する話とありえない世界が外側にある話があるんです。『指輪物語』は前者でいきなり“中つ国”に入ってますが、『はてしない物語』は後者で“ファンタージエン国”がどんなところかわからずじまい。その中間にあるのが『ナルニア国ものがたり』で、ドアを通して行ったり来たりしてる。でも僕は、ファンタジーの世界は、“ここじゃないどこか”じゃなくて、“今ここ”にあると思ってるんですよ。今僕がいるこの世界がアナザーランドだと。例えば『指輪物語』にクモの糸のように軽いけど鉄のロープより丈夫な、エルフのロープというのが出てくるんです。それはスーパーで売っている銀色のビニールひもと同じだと思うんです。ナイロン製で、軽くて、強度では鉄より強い。あれを束ねてワイヤーにしたらすごいですよ。

借景庭園94――現実の中に異世界がある。

井上 あるんです。そこらじゅうにあるんです。見慣れたものでも、まったく地球の文明と接点のない人に説明しようと考えると違って見えるんですよ。例えば電車を「地球でとれる鉱石の中から、薄く伸ばせるものを探し出して、薄く伸ばし、中空の器をつくって、しかも薄く伸ばせる素材は細くして、巻いて、中を磁石通すと、目に見えない力が働いて、その動力でケースを動かすことができるようになるので、それを摩擦を最低限にすることができる2本の伸ばした物質の上に置いて、そして動かす、大勢の人が乗って走るものだ」と表現すると、すごく幻想的になるんです。ほかのものもみんな見方を変えれば、すごく不思議なものに見える。それがわかれば、生きてることが面白くて仕方なくなるんですね。

――“イバラード”という名前は宮沢賢治の“イーハトーブ”に倣ったそうですね。

井上 宮沢賢治が岩手県を「ここはイーハトーブだ」と言った瞬間にイーハトーブになる。ぞくぞくしますよね。同じものでも、そういう名前で呼ぶと違う場所に見える。じゃあ僕が住んでいる茨木市の場合はどうなるのかと思って、“イバラード”という言葉で呼んでみたんです。そうしたら、全然今までと違って見えた。家の前の稲を刈った後の野原がさーっと広がって、地面の中にはむくむくした毛皮を着たモグラがいて、水たまりの中の島には不思議なカエルが住んでいる。これをそのまま書くだけでお話ができるぞと思ったのが、30年近く前の話です。
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