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『映画道楽』 鈴木敏夫/著
映画道楽
出版社:ぴあ
価格:1,575円

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対談風景康弘 それと本を読んで思うのは、敏夫さんはある流れとか、枠に入るのが嫌いな人だと感じました。世の中の流行とは、反対のことをやりたい人なのかなと。それは前々から話していて思ったんですが。

敏夫 決まったことをするのが嫌なんです。それは、確実にありますね。

康弘 『ハウルの動く城』の宣伝でもそうですね。「今回は、宣伝しない宣伝をする」と宣言した。僕は、また始まったと思いましたね。でもそれって経営者には、大切な資質なんです。まず既成のものを壊す。それから周りはお構い無しに、自分でこれをやりたいという。大体そういう人が、会社を上手くやっていると思います。よく敏夫さんは「社長になりたくない」と言っていましたけれど、僕は凄く社長に向いていると思いますね。

敏夫 それは自分では、分からないですね。

康弘 僕も今は社員を抱えた社長ですけれど、この会社を始めた時は一人だったんです。ですから「アニメージュ」創刊のお話を伺って、尾形さんが何もやらないとすると、最初は敏夫さん一人で方向性を作ったわけですね。それと似ているなと感じました。元々僕はソフトバンクにいたんです。システムエンジニアをしていたことがありますからネットに興味があって、本も好きだったんですよ。それで1999年の正月に、ソフトバンクの全社大会があったんです。この時、孫正義社長が「これからはネットの時代だ。何か面白い企画があったら、持って来い」と言ったんです。この言葉を聴いてから1週間ぐらいでインターネットを使った書籍取引の企画書を書いて、孫社長のところに持っていったら、ふたつ返事で「やろう」ということになったんです。

敏夫 孫社長が、発想の火付け役なわけですね。尾形と似ていますよ。

康弘 企画を出したのはいいですがその年の5月に、11月には事業をスタートさせると記者発表しましたから大変でした。5月の時点で社員は僕一人でしたから。

敏夫 どういう事業構想があったんですか?

対談風景康弘 調べてみると本は戦後だけで、170万冊出版されている。それで現在流通しているのは60万冊なんです。日本で一番大きな本屋『紀伊國屋書店』でも、持っている在庫は半分強程度。残りは、おそらく誰も見たことがない。それを見られるようにしたいと。あとは今だと、コンビニで皆さんが公共料金を支払う。そうやって誰もがお店に行く一般性がコンビニにあるのなら、ここで本を受け取れるようにしたらどうだろうと。もうひとつは、自分で本の在庫を抱えるのは難しいですから、これは本の卸をしているところの在庫をそのまま使おうと。つまりアイテムを揃えて、商品の受け取り場所さえ確保すれば、在庫自体は抱える必要はないという発想です。

敏夫 ぼくはセブンアンドワイがイー・ショッピング・ブックスだった時代に、気になるから徳間書店に聞いたんですよ。すると、それまで徳間書店が付きあってきた本屋さんでは、紀伊國屋書店の新宿本店が売り上げ第1位だった。ところが、やがてイー・ショッピング・ブックスがそれを抜いたと。ネット本屋と言っても本屋さんですから、こういうことが起こるんだなと思いましたね。でも僕はお話を聞いていて、悩む部分がありますね。つまりセブンアンドワイには、現在日本で流通している本が全部あると。だとすればその中から本を選ぶわけで、ある時にある本と出会うという特別な瞬間がない。このストレスが、いつの日か、ネット書店にとって大きな問題になるような気がする。それも近い日に。

康弘 それは分かりますね。でもそれは、本に限らず情報もそうですよね。かつてはマスコミ等が、膨大な情報を整理して一般に流した。今はネットの普及によって、誰でも何の情報でも受け取れる。それは便利である反面、一種のストレスにもなっていると思います。
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