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 『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』から、最新作『崖の上のポニョ』まで、アニメーション映画監督・宮崎駿の12年にわたる思想の軌跡をたどることができるのが、この『折り返し点 1997〜2008』です。
 1996年に刊行された『出発点 1979〜1996』(徳間書店)の続編として『折り返し点 1997〜2008』と名づけられた本書には、企画書、エッセイ、インタビュー、対談、講演、手紙、イラストなど60本余を収録しています。
 歴史学者の故・網野善彦氏や解剖学者の養老孟司氏といった方々との対談は、いずれもひじょうに読み応えのある内容になっていますし、長年にわたり愛読するサン=テグジュペリやロバート・ウェストール、堀田善衞への思いをつづった文章を読むと、宮崎監督の壮大な宇宙をかたちづくっている片鱗を知る思いがして、たいへん興味深いです。
 アニメーション映画の魅力、子供の教育、自然環境へのかかわりなど、さまざまなテーマについて、飾らないことばで、真摯に、声高ではなく語られていますので、本書を読んでいただければきっと、宮崎作品の背景にある深遠な思想がわかるとともに、宮崎駿というたぐいまれな人物をつらぬく信念と情熱が、静かにしっかりと伝わってくることと思います。
 この本には4人の男が登場する。いずれも、スタジオジブリの歴史には欠かせない。と、同時に、ぼくが影響を受けた男たちだ。
 「アニメージュ」初代編集長・尾形英夫からは仕事は公私混同でやることを、宮崎駿からは企画は半径3メートル以内に転がっていることを、高畑勲からは高尚な屁理屈を、そして、当時の徳間書店社長・徳間康快からはお金がただの紙っぺらであること学んだ。
 4人ともみんな正直で、いたずらっ子で、言いたいことを言う。仕事を仕事と思って真面目にやっていたら、身が持たない。道楽だと思わないとやっていられない。その点、まったく共通している。それが振り返っての大きな感想だった。
 そして、彼らを語ることが、そのまま “スタジオジブリの現場”レポートになった。
 ちなみに、その辺の事情を勘案して、この本のタイトルをつけてくれたのは編集担当の古川義子さんである。
 「仕事」と「道楽」。この相反する言葉をつなげてひとつにしたところがいい。気に入った。すぐに頭に浮かんだのが「不易流行」という言葉。これも、相反する言葉をつなげてひとつにしている。ぼくは、芭蕉の作ったというこの言葉が好きだった。


 

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